高齢化社会とは切り離せない認知症とは?
認知症とは
「記憶障害のほかに、失語、失行、失認、実行機能の障害が1つ以上加わり、
その結果、社会生活あるいは職業上に明らかに支障をきたし、
かつての能力レべルの明らかな低下が見られる状態」
と定義されています。
その種類もアルツハイマー型やレビー小体型、脳血管型など様々なものが言われており、
種類の違いによっても出現する症状などが変わってきます。
2025年 高齢者5人に1人が認知症の時代へ
平成29年度高齢者白書によると、2012年は認知症患者数が約460万人、
高齢者人口の15%という割合だったものが2025年には5人に1人、
20%が認知症になるという推計もあり、高齢化社会と比例して
認知症の方が増えていくと予想されています。
最近では、テレビの健康番組などでも認知症について、
特集されることが増えており、その症状や最新の治療法などが注目されているかと思います。
実例紹介 ~脳血管型認知症の方に対するご家族支援~
今回、ご紹介するのは9月に訪問リハビリの依頼を受け介入させて頂いている
脳血管型認知症のご利用者様についてです。
元々は軽度の認知症(物忘れがある程度、1人暮らしはできていた)でしたが、
脳梗塞を発症しその後、身体機能の症状よりも認知症の症状が増悪した方です。
現在では、娘様と同居し基本的な身の回りの援助をして頂いている状態でした。
私がリハビリで介入した際、身体機能としてはベッドからの起き上がりや立ち上がり、
手引き歩行まではできていました。
しかし、普段の生活では室内の移動はほぼ車椅子で、
立ち上がり動作にも介助が必要な状態となっており、介助をするご娘様の負担も多く、
また、本人様も申し訳ない気持ちが強くなっていたためか、
言葉数が少なく暗い表情をされているようでした。
身体機能としては出来る、しかし日常生活ではできない
私はリハビリで行っている動作と普段、娘様と暮らす生活のできる動作に差があるため、
普段、娘様がどのように介助をしているのか確認させて頂き、
なぜリハビリの時よりも介助量が増えてしまっているのかを確認しました。
ただ娘様の介助や援助は本当に献身的で、ご家族様のことを考えて一生懸命にして下さっておりました。
しかし、専門的に病状と今の生活状況を確認した時に見つけた問題点が2つありました。
① 毎回の動作に促しが必要
当たり前のように感じますが、認知症の方は少し前のことをすっかり忘れてしまうことが多くあります。
このように説明されると、頭では理解していてもいざ自分が介助者となった時に、
認識できていないことがしばしばあります。
「ベッドから車いすへ乗り移りをする」という何回も繰り返している動作も
認知症の方には毎回、初めての体験のように感じているかもしれません。
どのように立ち上がったら立ちやすかったか、どの部分を手で持てばバランスが取りやすかったのかなども
忘れてしまっている可能性があるため、その都度伝えて促していかなければなりません。
ついつい「さっきも同じこと言ったのに、なぜ同じことが出来ないのか?」というマインドに
陥ってしまう方がいるかもしれませんが、それは仕方ないことなのです。
② 動作の促しなどを分割して伝えられていない
そして、今回の実例の方にとって、最も問題となっていたことが
この動作を促す際に「分割して伝えられていない」ということでした。
これだけでは、どのようなことなのかわかりにくいかと思いますので、
具体的に記載していきます。
まず、「ベッドから車いすへ乗り移る」という動作があります。
ベッドに座っている人に「車いすへ乗り移って下さい」と伝えれば、
自然とその動作に移行すると思いますが、認知症の場合は自分の身体機能に見合った
適切な動作を選択することが難しくなり、動けなくなってしまうことがあります。
そのため、「車いすへ乗り移る」という動作を分割して促さなければなりません。
まず、「立ち上がって下さい」から始まりますが、
もっと言うと「身体を前に倒して」「両足で踏ん張って」と伝えた方がよりわかりやすいです。
その後は、「左手で柵を持って」「右手でこの黒い部分を持って」などより具体的にわかりやすく伝えていきます。
「座る」という動作も、色々な身体動作が複合しているため、
「お尻を車いすへ向けて、ゆっくり腰を下ろしてください」と伝えるとわかりやすいかもしれません。
※ここら辺のバリエーションは人によって様々です。
勿論、本人様の体調などの調子によっては、スムーズに行くときとうまくいかないときも
あるかとは思いますが、日差変動があることも頭に入れておけば今日は調子が悪いのかなと
考えて頂ければ出来るだけ心の負担が減るのではないでしょうか?
終わりに
この実例の方は上記の問題点を説明し、一緒に介助・援助する方法を練習したことで、
本人様自身も自分で行う動作も増えて活発になり、娘様の介助量も減ったことで
生活にゆとりを持てるようになりました。
少し違いではありますが、認知症の病状や症状をしっかりと理解して介入することで、
色々な負担を軽減することができます。
このような経験も自宅に訪問して介入できる訪問看護のリハビリでなければできなかったと
思っています。